「なあ、明日ディナーに行きたいんだけど」
「・・・わたしはいきたくない」
わたしは暗殺チームの中に絶対一緒に食事に行きたくない人がいる。プロシュートとメローネだ。この二人はきっと子供のころから叩き込まれたのであろう。食事作法が完璧なのだ。昔一度だけ暗殺チーム全員で食事に行ったことがある。彼らのナイフとフォークがかちゃかちゃと鳴らす音でさえ美しく見えてしまうのだ。最低限のマナーしか知らないわたしは、がちゃがちゃ音をたてて何も気にせず食べるイルーゾォとギアッチョがいることに安心していた。だからわたしは彼らと二人っきりで食事に行くなんてことは考えられないのだ。要するに、自分が恥ずかしい。
「は一緒にバールしかいってくれないじゃないか。どうしてだめなんだい?俺はと食事にいきたいんだ」
「・・・だって、」
「なんだい?言ってごらん。理由が聞きたい」
どうしよう、と思った。誘ってくれるのはとても嬉しかった。でも理由を言うのは、なんだか恥ずかしい。もちろんメローネがそんなことでわたしを嫌いにならないことぐらいわかってる。わかってはいるけど、いままでそんなことで誘いをことわっていたのかと笑われるのも嫌だし、そのせいで誘われなくなる可能性が1%でもあることも嫌だ。だってわたしはメローネが好きなのだ。
「わたし、」
「うん」
「わたし、メローネが好きなの」
「うん、嬉しいな。俺もが好きだよ」
「ほんとうに?」
「本当の本当にさ。の愛の告白が聞けてうれしい。でも、それはディナーを断る理由じゃあないだろう?」
嘘みたいだ。思い切った考えなしの告白をしてしまったこと、それにメローネが答えてくれたこと。嘘みたいだ。けれどどうやらわたしはもうひとつ告白しなければならないらしい。ああ、今の告白にくらべればどうってことないか。わたしはメローネの真剣な目を見た。彼がわたしと話をするときに腰をかがめる動作が好きだ。わたしの話を聞いてくれているんだな、と安心するから。
「わたしね、テーブルマナーが苦手なの。完璧なメローネと一緒に食事しているところをほかの人に見られるのが恥ずかしいの」
「はは、なんだ、そんなことか」
想定していた言葉を言うメローネは想定していたものとは違うやわらかな笑みだった。
「俺はのために最高のリストランテの誰からも見られない隅っこの、それでいて素敵な夜景が見える席を予約するよ」